●エピソード4
どっちも妥協しちゃって
Win-Win!
事務補助をしている
ヨシオさん(30代男性)のケース

ヨシオさん
認知の偏りやズレによる困難があるタイプ
こだわりが強く、自分のルールを周囲に合わせて変更できない。人の言葉を誤って解釈してしまうことも。

本人と会社のロジックのズレを丁寧に修正する

■本人にしか分からないこだわり、だからこそ譲れない
会社から支給される備品でも、値段が安いものや、消耗品であれば、何となく「これは自分専用のモノ」という感じがしますよね。ヨシオさんの場合は、その「自分のモノ」「モノに対する考え」に関する認識に少しズレがありました。
ヨシオさんにとっては、マウスは◯◯社のマウスで、マウスパッドもコレ!という独自のこだわりがあったのです。
もちろん、職種が変われば話は変わります。でも、ヨシオさんの職場は事務系で、会社もスタッフも使用するマウスについて強いこだわりがなく、みんな会社にあるものを使っていました。
それだけに「マウスは◯◯社のものでないといけない」という彼のこだわりは、会社はもちろん、上司さんにも理解しづらいものでした。
実は以前の職場でも、マウスに限らずさまざまな場面で同じようなことが起きており、ヨシオさんが短期離職を繰り返してしまう要因のひとつになっていました。

■他にも同じようなことがあることを見抜いた上司さん
「マウスは◯◯社でないとダメです!」
「高いものじゃないのだから、別に(購入してくれても)いいじゃないですか?」
このような話を聞くうちに、上司さんは、ヨシオさんには彼なりのいろんなこだわりがあって、それは譲りがたいものなんだろうな、と次第に納得してきました。
そこで上司さんは、ヨシオさんと面談の機会を設けて、
1. マウスの購入は認める。でも指定された予算内で買うこと
2. 部品の購入費用は会社が払うお金なので、今後は金額によって認められないケースもあること
3. 購入したマウスは、会社の物なので他の人が使う可能性もあること
このように、上司さんは、いったんヨシオさんのリクエストを認めたうえで、会社としての立場も伝えました。
お互いの要望を認めつつ、妥協できるところは妥協しあうことで、双方がうまくやっていくための方法を模索しています。
■定期的な面談を設定するのがオススメ
ヨシオさんのタイプは、認知のズレが引き起こすストレスにさらされてしまうことが多く、我慢に我慢を重ねた挙句に感情を爆発させてしまうこともあります。

このような場合は、本人と上司との間で、定期的に面談を行って、認識のズレを共有することがオススメです。支援機関が入っている場合であれば、三者面談、またはご本人と支援者さんだけで話してもらうのも良いでしょう。
しょっちゅう認識のズレが気なってしまう人であれば、思ったことをその都度専用のノートに書きこんでもらい、ノートの1ページが埋まったら面談を設定するというのも効果的です。
■相手を変えるのではなく妥協点を探る
認知や認識のズレについては、指導や教育でズレを正すというよりも「どうしたら会社も本人もストレスなく一緒に働けるか?」という視点で対応してみましょう。
ある会社では「◯◯さんに動いてもらう方法」を考えて実行。そのような細かいノウハウを積み上げて戦力化をしていました。

■このタイプの人だからこその強み
このタイプの人は、備え持っているこだわりや他の人と異なる感覚が発揮されたとき、会社にとってかけがえのない人材へ変貌します。
自分が納得するまで仕事に打ち込む意志の強さ、他の人が気付けない小さな違いを見つける用心深さ、オリジナルな発想力など、職場にマッチするとさまざまな面を見せてくれますよ!