できることもちよりワークショップについて

複数の困難を抱えて孤立している人に対して、ひとりひとりの「できること」を「もちよる」ワークショップ、通称“できもち”。エピソードに登場する方に対して、様々な立場の参加者が、まず「自分のできること」を考えてみる、という小さなアクションからスタートし、最後には参加者全員の「多様なできること」を共有し、困りごとを抱えた方の物語を中心に、各分野の専門家や市民が立場をこえて同じテーブルで対話することで、「どんな人も孤立させない方法」が地域に必ずあるという手ごたえを、体感するためのワークショップです。

  • 「しかたないよね…」と、困りごとを抱えた人の応援をあきらめてしまわないために
  • 1人でできること、10人でできること、100人でできることの違いを知り、つながる大切さを知るために
  • 専門分野の縦割りや立場を越えて、絆の強いネットワークをつくるために
  • 自分のほんのささいな「できること」が、誰かの役に立つことを知るために

=誰もが孤立することのない、優しい地域を<みんなでつくる>ためのワークショップです!

こんな地域(コミュニティ)や団体に開催をおすすめします

◎支援機関や行政の立場から・・・

  • 支援現場での連携がうまく行かない
  • 福祉や制度の枠組みでしか応援できないことに疑問を持っているが、どうしたら良いか分からない
  • 専門家だけでできることの限界に行き詰まっていて、もっと多様な人たちとつながりたい
  • どんな人の手も離さない支援の在り方を実現したい

◎市民の立場から・・・

  • 地域に困りごとを抱えた人の存在は知っているが、何をしたらよいかわからない
  • 地域の居場所に困難を抱えた方が来るが、どこに相談すればいいのかわからない
  • 自分も誰かの役にたちたいけれど、できることはあるのだろうかと考えている
  • 誰もが安心して暮らせる地域にしたい

できることもちよりワークショップは、地域づくり

できることもちよりワークショップの当日は、優しく熱気にあふれた場になりますが、大切なのは、ワークショップの前後です。何のためにワークショップを開催するのか? 地域の現状を踏まえながらその目的をじっくり考え、仲間になってほしい方々、ひとり一人に丁寧なお声かけをしていき、これからのつながりを深めます。また、ワークショップ後は、地域のあちこちで、リアルな「できることもちより」が生まれるように仕掛けていきます。

そのマインドや手法も、できることもちよりワークショップのノウハウとして、しっかりと体系化されています。

今までに様々な団体や自治体で実施されてきました

民間団体での開催

  • 名古屋市 一般社団法人しん
  • 大府市 特定医療法人共和会 共和病院
  • 郡山市 社会福祉法人こころん
  • 刈谷市 らっこちゃん親の会
  • 豊橋市 子どもの権利チーム
  • さいたま市 特定非営利活動法人ほっとプラス
  • 瀬戸市 せとおせっかいプロジェクト
  • 松本市 地域づくりセンター
  • 入善町 特定非営利活動法人工房あおの丘
  • 安城市 NPO法人リネーブル・若者セーフティネット
  • 東近江市 社会福祉法人わたむきの里

他多数

自治体での開催

  • 愛知県 市民活動推進課
  • 愛知県 子ども・若者支援地域協議会等連絡会議
  • 立川市 子ども・若者自立支援ネットワーク会議
  • 名張市 地域包括支援センター/名張市民病院
  • 長久手市 地域共生推進課

他多数

大学での開催

  • 東京工業大
  • 愛知学院大学
  • 南山大学
  • 岐阜大学

国研修での開催

  • 厚生労働省「重層的支援体制整備事業」
  • 内閣府「アウトリーチ(訪問支援)研修」
  • こども家庭庁「アウトリーチ上級者研修」 等

こんなことが起こります

たった一人の困りごとを抱えた方のために、立場や分野の垣根を越えて、みんなで力を合わせることができる地域になっていきます。また、地域の困りごとを見て見ぬふりせず、自分のできることでアクションしようと考える人が生まれます。

例)

  • 形骸化していたケース会議が「できることもちより」そのものの温かい時間になった
  • 今までつながりのなかった分野の専門機関と、気軽に行き来できるようになった
  • 病院から退院したばかりの独居の方を、医療と地域みんなで見守る体制ができた
  • 移動手段の少ない山間部で、「助け合いタクシー」をはじめた などなど!

できもち開催後の地域の様子

1. 一般社団法人しん様の事例

精神障害者の支援団体が主催。市民の方との共催イベントを創発

精神障害者の支援団体が主催。障害を持つ当事者の方が、自分の暮らす地域の方と出会い、助けたり/助けられたりの関係の中で暮らして行くことをサポートしたい!という目的のために、専門家だけでなく地域住民の方にも丁寧に声かけ60人ほどの参加者で開催しました。

事例の内容に「パートナーがほしい」というニーズがあったことをキャッチした市民の方が、その後主催の支援団体に声をかけ、共催の「お見合いパーティ」を開催。カップルが4組誕生。その後も、ライブやマルシェなど、当事者の方・市民の方・支援機関の協働でのイベントが立ち上がりました。

今も日常においても、「できもち」で出会った市民の方々や他の支援団体さんが、サポートや連携を続けてくださっています。その後関係性は年月を追うごとに深くなり、他のケース会議などでは得られない、絆の強い関係があるとのことです。

2. 特定医療法人共和会 共和病院様の事例

みんなが、事例の登場人物を「同じ地域に住む人」として関心を持てるように

地域のつながりが希薄な都市部の精神科病院では、「入院していた患者さんたちが退院すると、見守る人がいなくて孤立してしまう…」課題を抱えていました。そのためワークショップには、地域に普通に暮らす、医療関係者ではないみなさんをお誘いしたい!と準備をスタート。ところが、なかなか理解が得られず、参加のお返事がいただけない日が続きました。あきらめず、想いを伝えつづけたところ、その熱意にほだされた、沢山の方が会場を訪れてくれました。

参加前には「わたしに、精神障害を抱えた方にできることなんてあるのかな…」と心配する方がほとんどでしたが、ワークが進み、自分が「普段していることで、誰かの役に立てる」と実感が進んでいき…。

最後のお手紙を読んだ後に「この人を、地域にひとりにしておいてはいけないと感じました。」というステキな意見が交わされました。

困りごとを抱えたご本人の力、地域の力、自分のできることの力をまず「信じること」がスタートした瞬間でした。

3. 長野県松本市様の事例

過疎と高齢化が進む地域で、住民主体で地域の課題に向き合う文化が生まれる

高齢化率の高い町で、地域連携の役割を担う若手が「できることもちよりワークショップ」を開催しました。主催者の若者にほだされた、高齢の地域の方々が大勢参加してくださる、温かい場に。

事例を通して、交通弱者の移動の課題や、独居の問題など、地域の重い課題が浮き彫りになりましたが、その後何度も参加者同士で集まり、「ボランティアや有償ボランティアの形でできることはある!」と、買い物支援も有料でスタートしました。後に、誰でもふらっと立ち寄れる「おしゃべりカフェ」や「助け合いタクシー(地域タクシー)」など、地域の課題を解決する企画が次々と立ち上がり…。「お手紙をずっと手帳にはさんで、地域でわたしのできることをするようにしている」とおっしゃってくださる方も。

地域では「あのワークショップ」と呼ばれて度々開催を続けているそうです。地域で話し合うべき課題がでたときに、みんなで集まって「できること」をもちよる文化が浸透しました。