草の根たすけあいプロジェクト集合写真

わたしたちについて

草の根ささえあいプロジェクトとは

リーマンショックや震災の影響で社会全体が余裕をなくす中、仕事を失ったり、コミュニティを失ったりと、苦境に立たされている人が多様化・多数化した2011年。支援現場で、行政の職員として、障害児の親として、研究者として、自分自身の生きづらさに向き合う中で…様々な立場で違和感を抱いていた仲間達が集まり、「ほおっておけない…」「人ごとではない」と注目したのが、制度や支援の手から見放され、「孤立」した人たちでした。

社会情勢の中で表面化したこれらの苦しむ方々に、私たち自身も「わかってはいるけど、仕方がないよね(私たちのせいじゃないし、できることもないし…)」と思って、見ないふりをしてきたのではないか?その現状に気付き、大きなショックを受けたところから、草の根ささえあいプロジェクトはスタートしています。

まずは「制度や支援の届かない、穴にいる人はどんな方なんだろう?」と 草の根ささえあいプロジェクトの前身となる勉強会「穴を見つける会」を開始しました。

「穴を見つける会」の研究会や実践で見えてきたのは、子どもでも大人でも、家や家族があってもなくても、 お金がある人もない人も、皆が一様に孤立に陥ることがあるということ。

それにも関わらず、苦難に陥った人たちは、その理由を自己責任としてとらえられ、温かな応援の手や、優しい眼差しからも遠ざけられ、ますます深い社会的孤立に陥っていました。また、一旦孤立の状態に滑り落ちると、なかなか戻ってくることの難しい構造が、社会にあることもわかりました。

私たちが日々立ち向かっているのは「孤立」と、その「孤立」を生み出す社会です。誰もが望まない孤立を感じることなく暮らせる社会。そして、一旦孤立したとしても、また人との温かいつながりの中に、もどってこられる社会の実現を目指しています。

最初に出会う支援者が、徹底して本人を信じてよりそい、本人を中心にして、手立てを考える必要があるということ。でもそれだけでは、人は回復することは難しい…。わたしたち支援者だけでなく、同じ地域に暮らす、人たちの存在と、温かい応援が必要という事実でした。

人は、「誰かとつながりたい」「誰かの役に立ちたい」という思いを秘めている。その押し込められたその思いを一緒にとりもどし、社会につながりなおすことを、わたしたちだけでなく、全ての人を巻き込んで応援するのが、草の根ささえあいプロジェクトです。

今では60人程の仲間と、300人のボランティアさんたちと、500を越えるネットワークのみなさま方に応援していただける団体となった草の根ささえあいプロジェクト。それでも、まだまだできていることはほんの僅かだと、感じています。

わたしたちは、もっと優しくなれるはず。誰もが、優しさや温かさの中で、小さな幸福を見つけて、生きていけるはず。毎日そう思いながら、試行錯誤を繰り返しています。

草Pのミッション

1.ひとりひとりによりそう

のべ相談件数

15,590

  • 子ども・若者総合相談センター及びリンクサポートの累積相談件数(〜令和4年度)

わたしたちの活動は、いつも「たった一人」の苦しみを抱えた方に出会うことからはじまります。その方が、何に悲しみ、何に喜ぶのか。どんな時に心が震え、どんな時に息をひそめるのか。今、その方の前にはどんな風景が繰り広げられているのか?
困難な道のりを歩んできた道のりに最大限の敬意を払い、よりそいながら一緒の景色を眺めること。その方を苦しめるもの・むしばんできたものから守り、 狭められた世界を柔らかく押し広げていくこと。
“本当はこうありたい”という姿に向けて一緒に試行錯誤していくことを、わたしたちは大切にしています。

2.優しさの輪をひろげていく

連携機関数

433

ボランティア稼働数

1,247

  • 子ども・若者総合相談センター及びリンクサポートの累積件数(〜令和4年度)

困難を抱える方の背景は多様で、決してわたしたちだけで支援が完結することはありません。
そのため、わたしたちは地域のみなさんと共に困りごとを抱えた方を支える「ネットワーク型」の支援をしています。ひと肌ぬいでくださる方は地域にたくさんいらっしゃり、年齢や性別、立場や肩書きを越えていきます。わたしたちはいつもその豊かさと優しさに胸を打たれます。
ひとり一人は小さく弱い存在かもしれませんが、だからこそみんなで「できること」をもちよる。誰かの困りごとを一緒に考える時間が地域をつなげるのりしろとなり、やがてそのつながりは助ける/助けられるの立場を越えていきます。

3.「こうなってほしい」と思う世界の姿にまず私たちがなること

困りごとを抱えた相談者の力、地域の力を信じるために、まずはわたしたちが「こうありたい」という社会の姿になれるよう、日々自分たちの姿勢を見直し、毎日を楽しんで行きたいと考えています。そのために草の根ささえあいプロジェクトで大切にしている10の行動指針をご紹介します。

大切にしている10の行動指針

  1. できない理由、ではなくできる方法をみんなで考える
  2. ないものは「ないから仕方ない……」と言わず、つくっちゃう
  3. いつもみんなで妄想をする(頭の中をビジョンでいっぱいに!)
  4. 普段ごきげんでいるために、早めに不満やSOSを出す
  5. 相談者さんのためなら、手段を限定せず何でもあり!
  6. 相談者さんの中にある「世界観」や「物語」を大切にする
  7. 見ず知らずの私たちに悩みを打ち明けてくださる相談者さんを、心からリスペクトする
  8. 対話することに手を抜かない
  9. ギリギリまで粘る。正しいと思うことは、最後まで絶対にあきらめない
  10. 「こうなってほしい」と思う世界の姿に、まず私たちがなること

草Pのあゆみ

2011.4.23
「穴をみつける会」から始まった

「普段の支援のなかで、穴に落ちている人はいませんか? 代表の渡辺が、とある講演会で社会活動家の湯浅誠さんに投げかけられたことが始まりでした。東日本大震災が起きた直後のこと。制度と制度の穴に落ちている人のところへ降りていき、一緒に考えたい。立ち上げた勉強会が、「穴をみつける会」です。
早速、「穴」に落ちてしまった人、その経験がある人のところへ行き、とにかく話を聞くこと120人。インタビューで出てきた内容や言葉の整理をする中で、「孤立の川」を渡らざるを得ない状況があり、渡ってしまうとどんな声も聞こえなくなってしまうという現象を発見。調査報告書を発刊しました。

2012.4.27
草P法人化&よりそいホットラインスタート

「穴をみつける会」に集まったメンバーが中心となり、草の根ささえあいプロジェクト(任意団体)が発足。①つなぐ・つながる②しゃべる・考える③ささえあうを柱に活動を始めました。
同時期、24時間365日つながる電話でお話を聞く「よりそいホットライン」愛知ラインを行政より受託。緊急的な支援のためその人のもとに駆け付けることも多くあり、仲間を増やそうと「猫の手バンク」も始めました。

2012.7〜
できることもちよりで行こう!

「穴をみつける会」のころから、公的機関や公的制度が穴をふさぐのは難しい、既存機関も企業や個々人も、「できることもちより」のマインドが必要だ!と思っていました。そこから取り掛かったワークショップ開発が形になり、名古屋、刈谷、豊橋で開催。できもちワークショップは改良を重ねながら、草の根の根幹事業のひとつに育っています。2012/4/27には、ようやく一般社団法人草の根ささえあいプロジェクトとして法人化。

2013.6.26
名古屋子ども・若者総合相談センター開所

穴に落ちてしまった人から話を聞く中で、その人たちの子どもころ、若いころに出会えていたら!と思うことも多々。名古屋市で新たに設置されると聞きつけ、プロポーザルに応募し、ひたすらに熱意を伝えて受託が叶う。NPO法人起業支援ネットとのコンソーシアムでの運営。今はなき旧名古屋市教育館にて、相談員5人体制でスタートしました。この年7月1日に障害福祉サービスの「居宅介護事業所でこぼこ」も開所。アウトリーチ支援の体制が整い始めました。

2015
若者の居場所「ちくさ815」「ぶくパル」オープン

子若センターで出会う子どもたちの中には、毎日の居場所のなさに辛さを感じる子も。名古屋市千種区のあるマンションの815号室に、若者の居場所「ちくさ815」を名古屋市事業として開設。若者たちの日々のぼやき、悩みを知る場となりました。草Pの事務所機能もこちらに移転。本をテーマにした居場所「ぶくパル」も新栄にオープンし、プチ就労体験として、寄付された本のクリーニングや販売、イベント開催などもできました。

2017.2.26
生活困窮の方の長期就労に向けた調査研究集大成

草Pは、もともと公的な就労支援に関わっていたメンバーも多く、苦境にいる方が働くことをきっかけに、収入や役立ちを得ることの応援に陰に陽に関わってきました。2014年には名古屋市の「中間的就労事業」を受託。2016年には生活困窮者の長期就労を目指す支援方法の研究を、湯浅誠さんや、札幌、佐賀、横浜、滋賀で若者支援の第一線にいる方々と進めました。翌年のこの日、宮本太郎さんをコーディネーターにイベントにて成果発表。就労支援の手法について、草Pの大きな財産になりました。

2019.8.15
子若センターの理念が誕生

草P最大の事業となっていた名古屋市子ども・若者総合相談センター。毎日、がむしゃらに奔走する日々でしたが、スタッフ拡充のタイミングでもあるこのときに、丸二日、全スタッフ参加で理念づくりミーティングを開催しました。

迷いも弱さも
そこから生まれる小さな勇気もずっと大切に
どんな生き方も認められる
オールOKな社会をつくりたい

子若センターにとどまらず、草P全体の理念となりました。

2019.10
新拠点 金山branch、新事業 リンクサポート、もいもい、LINE相談 始動

念願の就労支援事業、それも「人を仕事に合わせる」ではなく「仕事を人に合わせる」という”環境支援型就労支援”として、「名古屋市若者・企業リンクサポート事業」を名古屋市から受託。極限まで困ってしまう前にちょっとした声掛けや関りで若者を応援できないかと模索する「オープン型交流スペース・もいもい(現Moi Moi)」、夕方5時~9時半のLINE相談事業もスタート。これに合わせて、相談事業は名古屋市(新)教育館@久屋大通と、金山branch@金山の2拠点体制になりました。スタッフも倍増し、全員で金山branchの設計の検討、備品購入、搬入と引っ越しの日々。

2020.6
コロナ禍に「草の根ホッとライン」始める

2拠点+ちくさ815の態勢で「さあこれから」という時期にじわじわと訪れたコロナ禍。家で堂々とじっとしていることに居心地のよさを感じる若者もいる一方で、社会の急変で困りごとが増えているはずなのに動けないもどかしさ。住まいの場所や年齢、困りごとの種類に関係なく相談に応じる電話相談&伴走支援の「草の根ホッとライン」を開設。スタッフ同士「できることもちより」で、ときに他地域の支援者を頼りながら手探りでスタート。

2022.2.23
草Pの10周年、学びの時間をみなさんと共有

10年前の「穴をみつける会」の日を草P誕生日とし、このとしの4月23日に10周年を迎えました。コロナ禍…を言い訳に記念事業を後ろ倒しし、渾身の10周年事業を準備。「誰もが自分らしくいられる優しい社会を目指して」と題して、湯浅誠さん、野々村光子さん、堀田聡子さんらを招いてのシンポジウム、性被害者や加害男性、地域共生などの分野で日本の最前線にいらっしゃる6人の方のオンライン講演の2本柱で、オンラインと来場のハイブリッドで開催しました。
今でも私たちの支えになる言葉や視点ばかりでした。

事業・活動内容

  1. オーダーメイドのサポート
    を実施する

    草の根ささえあいプロジェクトでは、①相談支援事業、②生活支援事業、③就労支援事業の3つの事業を行なっています。
    社会的に孤立している人、社会生活を営む上で困難を抱える人たちに対してオーダーメイドのサポートを実施しています。

  2. 私たちひとり一人をとりまく
    社会を優しくする

    社会的に孤立している人を地域みんなで優しくサポートできるように、さまざまな活動を行なっています。
    コミュニティを活性化させる活動、地域の人的資源の創出活動をはじめ、イベント・ワークショップの開催、代表渡辺による講演活動なども行なっています。

  3. 還元する

    草の根ささえあいプロジェクトでは、支援の現場へのリアルなフィードバック・還元を目的とした調査・研究活動を行なっています。社会的孤立に関する研究調査をはじめ、ワークショップツールやマニュアルの開発にも力を入れています。

代表理事メッセージ

草の根ささえあいプロジェクトを立ち上げる、数年前のある日。

自宅にもどって子どもに夕ご飯を作っていたところ、テレビからDVを受けている女性とその子どものニュースが飛び込んできました。女性(母親)は、行政の窓口に助けを求めに行きましたが親身になってもらえず、追い詰められて、小学生の子どもと車中生活をすることになりました。

着の身着のままの数日間・・・外食するお金も尽きた中、母親がコンビニでおにぎりを買って子どもに渡した所、子どもが、「その具のおにぎりは食べたくない…」と不満をもらしました。母親は、余裕をなくしていたのでしょう。「ワガママ言わないで食べなさい!」とおにぎりを子どもの口に押し付けました。子ども…小学生の男の子は、おにぎりを喉に詰まらせ、窒息死してしまったのです。

ニュースを聞いた後、私は涙が止まらず朝まで泣き続けました…。その女性は、「私なのだ」と思ったのです。子どもの口におにぎりを押し込む感触が、自分の手に残るようでした。

彼女と私との差は、ほんの紙一重です。
でもその小さな差が、二人のいる場所を決定的に隔てていました。

なぜ、このような隔たりが生まれるのだろう?
彼女にはなぜ、手を差し伸べる人がいなかったのだろう?
その答えを見つけて、隔たりを埋めていく仕事がしたい…誰も哀しむことがないように。

強くそう思い、会社を退職する決意をしました。あれから幾年月が経ち、多くの方々と出会い、仲間が増え、今があります。

「今のあなたなら、そのお母さんと子どもを救えますか?」

草の根ささえあいプロジェクトを立ち上げて何年か経過したある日、わたしに問われたことばです。

応えは、YesでもあるしNoでもあります。
確かに今のわたしたちは、その母子をサポートする、相談スキルもネットワークもあるかもしれない…でもそれは、わたしたちがそのお母さんに出会えた場合に限ります。

わたしたちがご縁をつなげる人たちは、困難を抱える方々の、氷山の一角でしかありません。誰もとりこぼすことのない、社会にするには、まだまだあまりに道のりは遠いと感じます。

でもわたしは、草の根の活動の中で出会う相談者の豊かな可能性や、そこに力を貸してくださる人々の多様性を知るたび、その先の未来に優しい景色が広がっていると、信じることができます。

一人では決してたどりつけない景色を、みんなで見に行きたい。
どうぞ、みなさんもご一緒いただけたら嬉しいです。

代表理事

草Pを支えるメンバー

関わるひとりひとりのことを、真剣に考える熱く…温かい気持ちを持ったスタッフのほか、多くの市民ボランティアの方(子ども・若者総合相談センター事業)や、各地でそれぞれ活動しつつ、そっと草Pを応援してくれる会員の皆様に支えられ日々活動しています。スタッフの多くは、社会福祉士や精神保健福祉士、産業カウンセラーなどの有資格者で、福祉の分野はもちろん、それ以外の多種多様な地域のネットワークを日々開拓し、出会ったひとりひとりの”ありのまま”を応援しています。

団体概要

名称

一般社団法人草の根ささえあいプロジェクト

設立

任意団体設立日:2011年4月23日
法人設立年月日:2012年4月27日

所在地

〒464-0075
名古屋市中村区本陣通五丁目6番地1 地域資源長屋なかむら2階

連絡先

052-486-4101(起業支援ネット内)

スタッフ数

53名(常勤:32名、非常勤:21名)
※ 2022年12月15日時点

代表理事

渡辺 ゆりか

理事・監事

理事 永井 文子
理事 榎本 雄太
理事 榊原 明美
理事 上原 倉生
監事 青木 研輔

事業内容

社会的孤立や貧困など様々な「生きづらさ」を抱える人々に対して、多分野にわたる支援者・専門家等の連携のもと、すべての人が地域で安心して暮らすことができ、また人とのつながりや関係性の中で、自らの力を発揮できる活躍の場を見出すことのできる社会の実現を目的とし、そのために次の事業を行う。

  1. 多分野にわたる支援者・専門家が相互に連携し、社会的な支援力を高める事業
  2. 社会的孤立・貧困等の社会課題及びその解決策について調査・研究する事業
  3. 社会的孤立・貧困等の社会課題を抱える当事者に対して支援を行う事業
  4. 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく、障害福祉サービス事業
  5. その他、附帯関連する一切の事業