「ちょっとしたことなんですが」と彼女は話し始めました。「となりの席の人も私と一緒でムーミンが好きで。ガチャガチャで当てたグッズを机に並べて、好きなキャラクターの話をしたりしてます」
勤務中に少し仕事の話を離れ、同僚と趣味や近所のお店の話をしているとのこと。「最近調子は悪くないです」と話す彼女に、どうしてだろう?と問いかけ、話してくれたことです。
高校生のころから鬱があり、不登校や親との不和、双極症の診断も出て、体調と向き合いながらの長い大学生活を送りました。いまの職に就き、出勤時間の工夫や服薬など、彼女自身が努力していることもありますが、何でもない雑談で気持ちが軽くなってもいるそうです。
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なぜ雑談に助けられるのか。私たちがひとつ思うのは、相手との「何でもない」、すなわち傷つけられたり驚かされたりすることのない会話で、安定的な人間関係を実感できるからではないか、ということです。
相談に来る若者の中には、家族の中や学校の中で、ふとした発言を取り上げられてからかわれたり、責められたり、話とは別の方向から怒られたりした経験を語る方がたくさんいます。雑談程度、と思って話し始めたことで相手との関係性の悪さが明るみになり、傷ついてしまう。人に話しかけるのが怖くなって当然です。
そんな若者たちが、「大ごとにならず、楽しい気分のまま終えられる雑談がある」と知り、小さな回復や安心感につながっていく。そんな出会いを増やせるよう、かかわりを続けていきたいと思います。