自分についての専門家は自分自身―――若者たちの言葉から考えること

 居酒屋の正社員になり、1Kの社宅に暮らしながら働く彼。月に6日ほどの休みの中で、予定を合わせてセンターの面談に来てくれます。「また自分一人で煮詰まっちゃってダメになったらあかんから、話せる場所を確保しておきたくて」。

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 新卒で入った職場でパワハラや人間関係に悩み、休職。部屋に引きこもり、家族の視線も辛くなって自転車で家出をし、名古屋にたどり着くという大冒険を経て、今があります。

 「大変な仕事だと思うけど、どうしてそんなに働けるの?」と聞くと、「楽して稼げる仕事はないって思ってるからっすかね」とさらり。

 人間関係に悩んだという彼に、居酒屋の仕事が合うのかどうか。店舗管理なども求められる将来を見越すと、心配にもなってしまいます。ただ、彼についての専門家は彼自身。これまでいろんなことにぶつかってきて、感じたこと、自分について知ったことがたくさんあるはずです。

 「毎日の(仕事の)ルーティンも抜けがちだから、メモをつくってそれを見ながらやってます」。「休みの日はひたすら、好きな芸能人の出てるドラマを一気見してますね、基本“陰キャ”なんで」。何気ない工夫の中に“専門家”の影を見つけ、賞賛を送りながら彼の歩みを応援しています。

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 何かを選んで進まなくてはいけない時が、ふいに訪れます。ほかの人と比べたり、学校の先生や医師に答えを求めたりしたくなるものですが、自分以上に自分のことを知っている人はいない。自分が自分の専門家になるしかない。そう気づいていくのが若者の時期なのかもしれません。

 今日も彼らの中に“専門家”の影を密かに探しながら、お話を聞いていきたいと思います。