物件探しに立ちはだかる2つの壁ーーー若者たちの言葉から考えること

 「奨学金の返済目途が経ったら」「スマホの機種代を払い終えたら」「過去の親からの暴力が許せないから今すぐにでも」「兄弟の世話と仕事に疲れ果てた」―――。

 いろいろなタイミングと背景で、一人暮らしを考える若者たちがいます。その願いをどう実現していくか。手順を確認し、計画を立て、必要に応じて不動産屋さんに一緒に行ったり物件を見たりしてその後に続く彼らの生活を見守るのも、わたしたちの“伴走型支援”のひとつです。

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 名古屋市の場合、低価格の民間賃貸物件は、たくさんある印象です。中部圏から学生や新卒の若者が集まる場所で需要が安定しており、交通網も張り巡らされているため、住みやすいエリアの1K、1DK物件は充実していると思います。

 一方で、さまざまな背景がある若者たちの物件探しでは、「審査の壁」と「初期費用の壁」が立ちはだかります。

 仕事がまだ長く続いていなかったり、家や体調の都合で現在は無職だったり。「家電をそろえるのは支援するよ」「お金は出せないけど緊急連絡先くらいだったら」という関係性の大人がいないことも多く、セーフティネットである公営住宅も、基本的には応募の対象外。物件探しのスタートの段階で、整理が必要なことがたくさんあります。

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 クリアが難しい条件があったときに、どんな選択肢があるのか。私たちも頭を悩ませることが多いのですが、居住支援法人や不動産屋さんにも知恵を借り、一緒に右往左往しています。欧州などでは低価格の「社会的住宅」が多いと聞いたことがありますが、一人で暮らしていくことへの保障がもっと充実することで、精神的な安定を得て、自分自身の人生を生きやすくなる若者が増えると支援の現場では確信しています。

 「家族が帰ってきた音にビクビクすることがなくなって、こんなに自由なんだと驚きました」。どんな事情があっても、最後は自分で決めた引っ越しだとしたら、それを叶えた時の若者たちの心境の変化はとても大きいものです。中には家族との同居で個人の基本的人権が阻害されている若者もおり、さまざまな壁を薄くしたり無くしたりという努力を、センターも含めて社会や大人の側でなされる必要があると感じています。