【座談会②】弱さを強みに、いろんな人を巻き込んでいきたい

【座談会①】「つながるってこういう意味なのか」実感しながらの草P12年からの続き

[座談会メンバー]

永井文子…名古屋市子ども若者総合相談センター センター長(2011年草P参加)

山口恭美…名古屋市子ども若者総合相談センター 相談員(2012年草P参加)

榊原明美…名古屋市子ども若者総合相談センター 副センター長(2012年草P参加)

榎本雄太…名古屋市子ども若者総合相談センター 相談員(2014年草P参加)

※聞き手:大島迪子…名古屋市若者・企業リンクサポート 就労支援員(2019年草P参加)

頼まれてもいないのに、伴走型支援をやり始め、続けてきた

――ことしで草の根ささえあいプロジェクトは12年。名古屋市から「名古屋市子ども・若者総合相談センター」(子若)を受託してから10年が経ちます。この中で、ちょっと手応えがあったこととか、少し「できた」と言ってもいいのかもしれないみたいなことってありますか。

山口)子若に期待されることや地域の中での役割も、はじめとはずいぶん変わってきましたよね。

永井)開所当時の子若は、「どこに相談したらいいのかわからない」という相談者さんを、ワンストップサービスセンターとして、適切に専門的な支援機関におつなぎするという機能が期待されていたんだよね。いろんな専門性を持つ支援機関が増えてきて、一方で困りごとを抱えた方が各支援機関の専門性を理解して自分からアプローチするのは難しいから。

でも、当時も今も、子若に相談してくださる方って複合的、絡み合って複雑な課題を抱えているじゃないですか。どこかにリファーすれば終わり、ということにはならないし、いきなりのリファーって相談者さんにも負担がかかるんですよね。そういうことって、子若をつくったころはまだ実態がわかっていなかった部分もあると思います。

相談者さんは勇気を振り絞って連絡をくださる。いきなりどこかに振られて、もしそこの人や団体と合わなかったらもう相談すること自体を諦めてしまう方もいるかもしれないということ。

だから子若は、仕様書の枠を超えて、最初から伴走型の支援をしてきたんだよね。支援の中で当然リファーもするんだけど、最初からリファーありきではない。まぁ、それなりに各方面との軋轢もありましたけど(笑)今はいい関係性の中で仕事をさせていただいています。そこで実績を重ねて、名古屋市さんとも繰り返し協議して、今は子ども若者指定支援機関という位置づけが理解されてきたのかなと思いますね。

山口)やっていく中で、伴走型支援が必要なんだってことをわかってくれる人もたくさんいることも分かった。同じ気持ちの人が、扉の向こうにもいたんだなっていう発見もありましたね。

草Pの強みは、お金がないこと、弱さを開示できること

――12年経って、団体としては人数が増えました。

永井)草Pって自分たちだけでは頑張れない団体だと思うんですよ。自分たちだけではできないことや、弱みを存分にぶちまけて、そうすると草Pの弱いところを担ってくれる人が、「じゃあ手伝ったるわ」って出てきてくれる。

いつも相談者さんの住居の件でお世話になっている不動産屋さんも、「僕は普通の不動産屋の営業マンだったんですよ。草の根さんと出会わなかったらこんなことやってませんよ」って言われるんだよね。草の根の弱さの開示が、人や地域との接点を生み出しながら、普通の人たちをちょっとずつ変えていってるんじゃないのかな。

榊原)草Pには「珍しいきのこ」(*1)っていう言葉があって。そういうキノコが勝手に生えてるわけじゃなくて、相談者さんを助けようでもなくて、わたしたちが「困った困った」と言っていることで、なんだかよくわからないけど助けなきゃって思ってくれて、キノコの胞子がまき散らかされる、みたいな話が先日もある研究会で出てました(笑)。

わたしたちが弱さや至らなさをみんなに見せることで、そこを補完する人が現れて、それが相談者さんに繋がっていくみたいな。普通のキノコだったはずなのに、珍しいキノコにどんどん変異していくというのがあるんじゃないかなって思います。

*1 珍しいキノコ…自分の役割に上限を決めずに、目の前の人のために柔軟な発想で力を発揮してくれる人。

榎本)そういえば先日、子ども食堂のイベントに参加しようと思ったとき、テントを使いたいんだけれど僕らは持っていなくてどうしようってなって。他の子ども食堂にお願いをして、借りられたことがあった。お金もないし、テントも持っていません、すいませんって言うしかない草Pが、結果的に子ども食堂と他の子ども食堂をつないだ形になりました。こうやってつながっていくっていうのもありなんだなと思って、今、意識的にチャレンジしています。もし草の根がお金持ちだったら、自分たちがテントを買って貸せばいいんだけど、お金がないから人の力を借りる。それがつながりになるんだなと。お金があったら一瞬で終わっちゃいますもんね。

もっと街に出て仲間を増やしたい

――弱さを強みにしつつ、もっともっといろんな人とつながっていきたいですね。

榊原)以前は、自主事業としていろんなイベントやセミナーもやっていて、そこに少しずつ人が集まってきて、仲間が増えていったっていう歴史があるんだけど、委託事業を受託して、相談者さんもどんどん増えていく中でそういう機会は減ってしまった。仕事として求人に応募してくれたことで仲間になってくれるメンバーは増えたけど、仕事というよりも草Pの匂いにつられていつの間にか仲間になった、みたいなつながり方はちょっと減ってるのかな。

永井)以前は草ラボ(*2)がその役割を担っていたね。毎月日曜日にコミュニティセンターとかでOST(ワークショップ)やってたんだけど。あの頃も忙しかったけど、今よりは余裕があった(笑)。

*2 草ラボ…毎月一回のだれでも参加できる勉強会。2011年~2019年ごろ開催。

山口)自分たちで子ども食堂もやりたいけど、まだ難しいかなー。

榎本)でも、いい意味で変な人、「この人みっけ!」みたいな面白い人は今もいろんなところにいる。それは自分たちが街に出ないとわからない。そんな人を発見して、キャッチしていくことは続けていきたいですね。