還元する

草の根ささえあいプロジェクトでは、支援の現場へのリアルなフィードバック・還元を目的とした調査・研究活動を行なっています。社会的孤立に関する研究調査をはじめ、ワークショップツールやマニュアルの開発にも力を入れています。

1. 調査・研究活動

草の根ささえあいプロジェクトの調査・研究活動のスタンスは、「現場で感じていること」を「調査というプロセスを通じて言語化」して、さらによりよい現場支援のためにフィードバックすることです。調査・研究では日本全国さまざまな支援現場におもむいて、それぞれの現場からの「ことば」を集めることを重視しています。結果として、私たちは日本各地の素晴らしい支援者、支援団体とのつながりを得ることができています。

社会的孤立に関する研究調査

草の根ささえあいプロジェクトが行っている調査は、主に社会的孤立をテーマにしています。
調査は段階を踏んで、社会的孤立に陥る「要因」、孤立状態から支援の手につながるために「支援者が大切にしなくてはいけないこと」、そして社会的孤立の状態から回復するための手段のひとつとしての「就労」について、調査・研究を行ってきました。

1. 「社会的貧困に至る支援サイドからみたメカニズムの解明および機能別支援体制の構築に関する調査研究」(2011年)

複数の困難を同時に抱え社会的孤立や貧困の状態を経験しながらも、支援機関や周囲のサポートを受けて一定の状況の回復に至った相談者120名を選定してヒアリング。人が孤立に至るプロセスの解明と、そこから回復に至るために必要な機能の解明を行った。草の根ささえあいプロジェクトにとってエポックメーキング的な図、孤立の川の図が誕生した調査。

  • 厚生労働省 平成23年度セーフティネット支援対策等事業費補助金社会福祉推進事業)
  • 草の根ささえあいプロジェクトがインタビューを主とした調査チームを担当

2. 「複数の困難を同時に抱える生活困窮者へのヒアリング調査に基づく、当事者サイドからみた相談支援事業のあり方に関する研究」(2013年)

生活困窮や社会的孤立に至った方が、何をきっかけに回復に至ったのか。また、その際に相談支援がどのように機能することが必要なのかを解明した調査。孤立や困窮からの回復として、①手厚く駆けつける支援 ②話しをじっくり聞き、存在を容認する支援 ➂居場所と仲間 ④役だち が必要で、①~④に進むほど、支援者の手をはなれ、支援者以外の他者との関わりの中で回復していくことが分かった。今でも草の根ささえあいプロジェクト指針となっている手数の曲線の図がこの調査で生まれた。

  • 厚生労働省 セーフティネット支援対策事業(社会福祉推進事業)

3. 「生活困窮者の長期就労を実現した企業へのヒアリング調査に基づく、効果的な就労支援の方法に関する研究事業」(2016年)

生活困窮者が困窮状態から抜け出すためには、長期の就労が実現することが必要であるが、そのために必要な、企業と支援者の役割を、全国の企業・支援者にヒアリングとして、ノウハウとして抽出。また、企業と支援者が連携して、「相談者をムリに変えて社会に適応させるのではなく、環境を合わせることで戦略化する」手法を解明した。調査から見えてきたマインドと手法は、当団体が実施する、名古屋市若者・企業リンクサポートのベースとなっている。

  • 厚生労働省 生活困窮者就労準備支援事業費等補助金(社会福祉推進事業)

4. 「地域共生社会開発実践ガイド」(2018年)

複数の困難を抱えた方の支援をあきらめず、多様な立場の人たちで集まり、それぞれの「できること」を提供することにより包摂的な社会を目指す「できることもちよりワークショップ」と、「できることもちよりワークショップ」を軸とした、地域診断(地域の課題の発見)→地域開発(解決のためのネットワーク作り)までをマニュアル化したワークブック。このテキスト通り進めることで、地域に「できることもちより」文化が浸透することを目指している。

  • 日本財団

未来予想図研究会

若者への相談支援は、一人ひとりの希望や夢を大切にすることから始まります。
多様な談者さんに対して、それぞれの「よい未来」「今より広い可能性のある未来」を予想して、そこから逆算した、「今」や「ちょっと先」に向かって未来思考のケースワーク・面談が行えるよう、定例の研究会を行っています。プランニングだけではなく、相談者さんと一緒にシートを作って行くことで目指すべき未来をお互いの共有知にするよう取り組んでいます。

リンクサポート研究会

「環境支援型就労支援」をベースに2019年から「名古屋市若者・企業リンクサポート事業」がスタートしたものの、1年ほどが経って課題も明らかに。多様な若者たちを前に、うまくマッチングや定着がサポートできるときと、できないときがあることがあり、その分析を試みる。社内研究会であるものの、NPO法人起業支援ネットの力も借りながら。サポートの手法を増やすべく、在宅ワークの開拓や、自信をつけるプロセスの可視化などを検討。

2. ツール・マニュアル開発

草の根ささえあいプロジェクトでは、ツール・マニュアル開発も積極的に取り組んでいます。ひとりひとりの「できること」を「もちよる」ワークショップ(通称:できもち)、社会資源マップ作成ワークショップのようなワークショップの開発や、環境支援型教育支援マニュアルの作成などを行っています。

できることもちよりワークショップ(できもち)

「『誰もが暮らしやすい』地域のつくりかたを、みんなで一緒に考える」をテーマとした、NPO法人起業支援ネットさんと、草の根ささえあいプロジェクトが開発したワークショップです。地域のさまざまな困りごとに対して、制度の垣根、専門家とそうでない人たちとの垣根をこえたつながりを作ること。そして「まず何からできるか?」を考えることを目的としています。各自治体や団体での実施実績も多数。詳しくは専用サイトをご覧ください。

社会資源マップ作成ワークショップ

草の根ささえあいプロジェクトが大切にしている思いの一つに、関わった相談者さんを支える、地域のネットワークを開拓し、根を張るようなつながりを生み出す”根っこワーク”の思いがあります。そんなスタッフひとりひとりの大切な”根っこワーク”は、地域を支える重要な社会資源。顔の見える関係のある、地域の重要なキーパーソンとその親密度を見える化した社会資源マップは、日々の支援の現場で生きる大切な私たちのツールです。そんな社会資源マップを、あなたの地域でも作成するワークショップの準備もございます。ぜひお問合せください。

環境支援型就労支援マニュアル

草の根ささえあいプロジェクトが開発した、「本人を変えない、環境を合わせる」就労支援のマニュアルブックです。基本的なマインドから、本人のアセスメントや企業文化の見極め方法、さらに、思いのある企業と出会い(企業開拓)、環境調整(構造化)までをマニュアル化しています。
演習のワークもありますので、ご興味のある方はぜひご連絡ください。